籐真千歳 ハヤカワJA
ライトノベル作家 × ハヤカワの企画から生まれた一冊。
可愛い揚羽ちゃんの表紙と分厚いハヤカワJAが両方備わり最強に見える。
タイトルから、あっエロい話なんだな、「ねじまき少女」みたいなエロいシーンがいっぱい出てくるんだろうなと思って回避してたんだけど、今月のSFマガジンの短編が面白かったので本編読んでみた。
結論から言うと、そういう方面でエログロな話はあんまり無くて安心して読めたんですが。
《人工妖精》《海底の魔女》、《青色機関》、《傘持ち》、公共仕様の人工妖精たち、《終末の予言》……意外でSF的想像力に富んでいて、それで切ない。置名草の秘密が明かされる下りはグッと来てしまった。あれは反則ものに切ないトリックだったなぁ。
美しい設定と、それを徐々に放っていくカタルシスが素晴らしい。
戦闘美少女ロボットが主人公、ニヤリとするようなカッコイイ用語ルビ、時々挟まれるコメディと、ライトノベルの文脈も受け継いでいて馴染みやすい。コミカルに話を盛り上げ、電動メスで切った張った、でも健気で弱い揚羽ちゃんはかわいい。理想の美少女ロボット。
この作品に出てくる人工妖精って、男性的な想像で作られた理想の女性なんですよね。もちろん、島の向こう側にいる女性は同じように理想の男性を作っているわけだけれども。
公共仕様の人工妖精や《アクアマリン》気質の彼女たちを見ていると、彼女たちは本当に自分の意思を持っているんだろうか?と疑いたくなる。
ああいうの、本当に夫婦としてやっていけるのだろうか? 完璧に理想の異性を演じられて、仮初でも人工妖精に自由意志を認めて彼女が自分を選択して好いてくれているんだと確信が持てればいいのかしら?
スワロウテイル世界観における人間の男と人工妖精の女の子の恋愛過程や出会いが分からんので何とも言えないけど、人工生命との恋愛話を入れるならここはきっちり掘り下げて欲しいと思う。
まっとうな人工妖精はあんまり出てこなかったので、もっと普通の彼女たちの日常についても知りたいな。特に出生、恋愛、結婚についてどう解決するのかは、SF的には絶対欠かせないところだと思うので是非読みたい。
文章的なところでは、ところどころで地の文が冗長に感じられた部分があったのは残念。特に前半の200ページくらいはその気が強くて、ページが白くなりそうなのを強引に地の文で埋めたような違和感を感じさせる。
ボリュームがかなりありますが、読みやすい一冊なのでライトノベルファンにもお勧め。
次巻も読みます。
おすすめ度:☆☆☆☆☆