飛浩隆 ハヤカワJA
繊細な描写の裏に潜む、退廃的エログロが心を揺さぶる一冊。数値海岸の静かな夜の海辺のシーンでは、一文一文の美しさが印象に残る。展開的な盛り上がりどころも完璧に掴んでいて、蜘蛛たちとの戦いの緊迫感もさることながら、ジュールがシチューから兎を取り上げるシーンの最大瞬間風速が大きくて鳥肌が立った。
蜘蛛たちの正体とか、夢幻アセンブラとか、数値海岸の真相とか、《天使》なる存在だとか、まだまだ設定的な謎も解き明かされていない。ジュールが歩むこれからの道先が気にかかる。
日本SFらしくリーダビリティも高いので、あらゆる層にお勧め。ランキングとなると、虐殺器官やハーモニー並に人気が高いのも頷ける傑作。
☆☆☆☆☆